第6章 松野家にご招待!
【一松side】
二階に上がっていく絵菜の背中を目で追う。
…泣きそうだったな。
多分、俺以外の兄弟だったら絶対気付かなかったくらいの表情の機微。
常に他人の目を気にして生きてきた分、感情や表情の変化に敏感なんだよね、俺。人と関わらないからそんなの意味ないのに、ほんと皮肉。
でも、なぜだろう。
絵菜が気になって仕方がないんだ。
女の子だから、じゃない。
……自分と、似ているから?
泣きそうだったのはほんの一瞬、その後は懸命に何かを堪えているみたいだった。
そして、俺が話しかけた後の、あの張り付けたような笑顔。
いつもあんな笑顔なわけじゃない。明るい子なのは事実だろう。
でも、さっきのは明らかに不自然だった。俺からすれば。
闇とまではいかないけど、彼女には影がある。
…まぁ、だからって俺如きがどうにかできるもんでもないけどね。そんな力もないし。
でもいつか、彼女が自分の抱えてるものを打ち明けてくれたら、その時、俺はどうするだろうか。
……やめよう。考えるだけ無駄だ。先のことなんて誰にも分からないんだから…