第6章 松野家にご招待!
公園を出た私たちは、歩いて15分先にあるという松野家を目指しながら、ぽつぽつと会話を交わす。
「…その…さっきは本当にごめん。取り乱しちゃって」
チョロ松くんが申し訳なさそうに眉を下げるので、私は慌てて否定する。
「ううん、気にしてないよ。チョロ松くんみたいな人、世の中にはたくさんいるし」
「そ、そう?あ、ありがとう…」
それきり、チョロ松くんは黙り込んでしまった。どうやら女の子に慣れてないのは本当らしい。
でも、これまでは他のみんなと同じく普通に会話できてたはずなんだけど…どっちがチョロ松くんの素なんだろう?聞いてみようかな…ううん、あまりプライバシーに踏み込まないほうがいいよね。
その時、鞄の中のスマホが震えてるのに気付く。電話…どうしよう。今はチョロ松くんもいるし…。
「…あれ、なんかバイブ鳴ってない?」
あ、チョロ松くんも気付いちゃった。
「うん、電話みたい」
「出なくていいの?僕のことは気にしなくていいよ」
「そう?じゃあちょっとごめんね」
私はスマホを取り出し、着信主を確認する。…あれ…?
「…この番号…」
うっすらとだけれど、覚えてる。昨日かかってきた無言電話の番号に似てる気が…。
「…もしもし」
意を決して出てみる。しかし、
プツンッ…ツーツーツー…
…また、切れた。
「…絵菜ちゃん?どうかした?」
私の様子がおかしいのを察したのか、チョロ松くんが声をかけてくる。
…まだ2回目。間違い電話の可能性も否定できない。うん、大丈夫、まだ耐えられる。
「ううん、なんでもないよ。間違い電話だったみたい」
これ以上悟られないように笑顔を作るけれど、チョロ松くんはまだ腑に落ちないようで、「本当?」と聞いてくる。
余計な心配をかけるわけにはいかない。それにせっかくこれからみんなと遊ぶんだもん。嫌なことは忘れなきゃ。
私は「大丈夫!」と笑って、チョロ松くんを安心させ、再び家までの道を歩き始めた。