第26章 6つ子と、私。【ノーマルEND】
【絵菜side】
ふぅ…急ぎすぎたかな。思ったより早く駅に着いちゃった。
ホームの電光掲示板を見上げる。電車が来るまで、あと20分か。
6つ子のみんな、いきなり里帰りだなんてきっと驚いてるだろうな。仕事を始めてからのこの数ヶ月間、家のことがどうなっているかも話してなかったし。
というか、昨日まで特に動きもなかったんだけどね。
仕事から帰ってきて早々実家から電話が来て…しかも相手はお父さん。
『店の今後について話がある。休みの日に帰ってこい』
と、ただそれだけだったんだけど、ほぼ絶縁状態だったから声を聞けただけでも嬉しかった。
ちょうど今日が休みだったし、私自身あまり日を開けたくなかったから、さっそく昨日のうちに会社に連絡を取って、三日間の有給をもらったんだ。無理を聞いてくれた部長には感謝しないと。
それにしても、スマホの充電が途中で切れちゃったのにはびっくりしたよ。これもだいぶ使い込んでるから、消耗激しいんだよね…電車の中にコンセントあるかなぁ。
おかげで言葉少なになっちゃったけど、どうせすぐ帰ってこられるだろうし…向こうに着いたら、またみんなに連絡しておこう。
あと15分…5分前にはホームに電車が入ってくるから、10分待てば乗れるよね。うーん、スマホが使えないから暇だな。
…ん?
なんとなく、線路を挟んで向かい側のホームを眺めていると、見覚えのある黄色いパーカーとピンクのパーカーが目に入る。
あれは…もしかしなくても、十四松くんとトド松くん?
なんで二人がこんなところにいるんだろう?キョロキョロしてるけど、駅員さんでも探してるのかな?
他にも人がいるし、手を振っても気付かれないかも…
と、その時。たまたまこちらを向いた十四松くんと目が合った。
「あ」
十四松くんは私を指差して、少し離れたところにいたトド松くんを呼び戻す。何か言っているように見えるけど、周囲のざわつきや電車の音で全く聞こえない。
と、とりあえず手を振ろうかな?
すると十四松くんが何やら準備運動のようなものをし始める。え?まさか…
しかし、嫌な予感が的中する前にトド松くんが鬼の形相で彼の体を拘束し、そのままずるずると引っ張っていってしまった。