第25章 幸せに咲く花【トド松END】
家の近くまで来た時には、すでに涙も涸れていた。
もう、終わりかもしれない。半分衝動的だったとはいえ、散々責め立てた上に頬を思い切り叩いてしまった。いくら彼にも問題があったからとはいえ、やり過ぎてしまったことに変わりはない。
彼との繋がりが断たれた以上、他の5人とも連絡を取り辛くなるだろうな…むしろ自粛するべきかもしれない。
しかし、私のその決断は、ものの数秒で打ち砕かれた。
「絵菜!ひっさしぶりー!」
「!?」
…この明るい声、まさか。
案の定、振り向くと赤いパーカーの彼。
「お、おそ松くん!」
「あ、くん付けで呼ばれんのも超久々。いやぁ、にしてもすっごい偶然だなー。仕事帰り?」
「う、うん…」
「だよなー、スーツ着てるもん。あ、ちなみに俺はパチンコ行くとこなんだけど、君も一緒に来る?」
「え、遠慮しておきます…」
「うん、だと思った。あははっ、言ってみただけー」
…なんだろう、前までの私ならこんな彼の態度に少なからずイラッとしていたはずなのに、
変わらない彼に安心してしまう。からかい方はトド松くんと似ているのに、一体何が違うのだろう。
「…ところでさ、絵菜。ひょっとしてなんか悩んでる?」
「…え」
「ああ、無理して言う必要はねぇよ?ただ、元気なさそうに見えたからさ」
「おそ松くん…」
迷う。彼の厚意に甘えていいものか。
おそ松くんならいいアドバイスをくれるかもしれない。仮にも6つ子の長男だし、いざという時は頼れる人だもん。