第25章 幸せに咲く花【トド松END】
「うーん、我ながらたち悪いなぁとは思ったんだけど、君があんまりにも真剣だからついからかいたくなっちゃって。あ、ちなみにさっきの涙は本物だよ。僕感情をコントロールするの得意なんだよね。涙を出すことくらい余裕でできちゃうんだ。えへ、すごいでしょ?」
からかう…?
私、騙されたの?
目の前にいるのは、正真正銘の¨トド松くん¨。私が会いたくて会いたくてたまらなかった、恋する相手。
なのに、
そんな彼が、心の底から許せなかった。
パン…ッ!
―辺りに響く、乾いた音。
右手が、じんと熱を持つ。気付けば、体が勝手に動いていた。
「…ひどいよ、トド松くん…っ!私はっ…あなたに嫌われてしまったんじゃないかって、ずっとずっと不安で、仕方がなかったのに…!」
「…!…」
涙が溢れてくる。とめどなく。
「だから勇気を出して聞いたのに…からかうだなんて、そんなの…人としてどうかと思う…っ!もう、知らない…!!」
走り出す。振り返ることなく。…だって、彼は追いかけてこないから。きっとそう。
私のことなんて、トド松くんにとってはどうでもいい存在なんだ。連絡をしなくなったのも、単に私に対する興味が失せただけ。
だって彼はモテるから。女の子と街を歩いているところを何度も見たことがある。他の兄弟からいろんな逸話を聞いたこともある。
…分かってたことじゃない。彼に釣り合うわけないって。
でも…
「…ほんとに、追いかけてきてもくれない…」
足音すら聞こえてこないことに絶望する。
…ああ…
やっぱり私に恋なんて…できっこないんだ…
***
「…叩かれちゃった。けっこう痛かったな…。……はは、今さら後悔するなんて、僕って救いようのないクズだ…」
***