第25章 幸せに咲く花【トド松END】
あまり変わったものを頼む気になれなくて、結局普通のドリップコーヒーを注文し、席に着く。
飲みながら、ちらちらとカウンターを窺う。トド松くんのことが気になって仕方がない。
きっと少し前までなら、制服姿かっこいいね、とか言えたんだろうな。
その後の接客は通常通り。たまに他の店員さんと笑顔で会話もしていた。
確信する。やっぱり私は、彼に避けられているんだと。
最後にMINEで会話したのはいつだっけ?それはどんな内容?
履歴を辿れば確認はできるけど、今本人が目の前にいるのに、わざわざそんなことをするのもおかしな話だ。
店員と客の立場だったからにせよ、無視はされなかった。ぎこちなかったけど、笑ってくれた。
トド松くんは優しい人だもん。きっと話を聞いてくれるはず。
それなら、私の取るべき行動は一つだ。
コーヒーを飲み終わり、席を立つ。その足で私は再びカウンターに向かった。
他にお客さんは…いないよね。チャンスは今しかない!
「あ、あの、トド松くん」
「!…どうかされましたか?お客様」
「あ…」
そ、そうだよね、仕事中なんだもん…さっきが特別だっただけ。
当たり前なのに…すごく、距離を感じるな…
「…し、仕事中にごめんなさい。その…」
「……」
「……や、やっぱり、なんでもないです。ご、ごちそうさまでした…」
何を考えているか分からない表情のトド松くんが怖くて見ていられなくなった私は、軽くお辞儀をして店を出ていこうとした。
「…待って」
「…え?」
小さな声だったけど、はっきりと聞こえた。¨待って¨と。
振り向くと、トド松くんは他の店員さんのところへ行き、何かを話している様子だった。
再びカウンターまで戻ってくると、彼は周りにバレないようそっと私に耳打ちする。
「外で待っててくれる?裏口のほう。すぐ行くから」
「!う、うん…?」
私が返事をすると、彼は店の奥へと引っ込んでしまった。
もしかして、もう上がりなのかな?それとも休憩?
いずれにせよ、彼は私を拒絶しなかった。待っててということは、私と話をしてくれるって受け取っていいんだよね。
移動しよう。待ってる間に、聞きたいことをまとめなきゃ。