第24章 宝物は君だけ【十四松END】
昼食を取った後、私たちは遊園地を思う存分満喫した。
コーヒーカップで全力回転したり、お化け屋敷で悲鳴を上げたり、メリーゴーランドの馬に二人で乗って落ちかけたり……うん、満喫したよ!ちゃんと!
こんなに楽しい休日は初めてで…デートの相手が十四松くんでよかったと、心から思った。
閉園時間が近付く。私たちは最後に観覧車に乗り込んだ。
「わぁ…夜景が綺麗…」
ネオンがキラキラと輝く景色を一望し、私の口から思わずため息が漏れる。
「うん、綺麗だねー。僕も夜までいたことないから、夜景を見るのは初めてなんだ」
「そうなの?ふふ、実は私も。遊園地は子供の頃に家族と行った以来だったから、大人になってから来ると、また楽しみ方が違って新鮮だね」
そう…ましてや、男の人と二人で観覧車に乗ったことなんてなかった。あいつとはあまりデートらしいデートはしなかったから。
向かいには十四松くんが座っている。いつもなら彼の側にいると安心できるし癒されるのに、今は顔を合わせることすらできない。
意識してしまう。…だって私は、彼に恋をしているから。
ただでさえ、デートという名目で遊園地に来て、お決まりのように観覧車に乗って…誰がどう見てもやっていることはカップルそのものなのに。
…十四松くん…静かだな。今、どんな気持ちなんだろう。
もしかしたら、疲れて眠っちゃっているのかもしれない。今日はいろいろあったからな…
「…絵菜」
「!」
ずっと黙ったままだった十四松くんが、私の手を取る。それを両手で包み込んだ。
「十四松くん…?」
俯いていて、表情は見えない。
「…あのね、僕…君を助けられて…嬉しかったんだ」
「え…?」
「君の元カレの騒動の時…僕たちはあくまで単なる協力者で、実際に君をあいつから救い出したのは、カラ松兄さんとチョロ松兄さんだったよね。それがすごく…悔しかったんだ」
「…!」
「二人に嫉妬してるとか、そういうんじゃなくて…僕も君を支えたかった。助け出して、もう大丈夫って言ってあげたかった。…わがままだって分かってても、僕は君に必要とされたかったんだ」
彼の肩が震えている。その声は、悲しみに満ちていた。
「…十四松くん、どうしてそこまで…」