第24章 宝物は君だけ【十四松END】
「………大好きだから…」
「え…」
「僕、絵菜に恋してて…君のことがすごく、大好きなんだ」
…ずっと、泣いているのかと思っていた。
でも、ようやく私を見てくれた彼は…明るい笑顔を封印し、真面目な表情をした、れっきとした大人の男性で。
普段とのギャップに、ドキリと心臓が大きな音を立てる。なんだか、いつもの十四松くんと全然違う…ううん、もしかしたらこれが、本当の彼なのかもしれない。
「嘘…ついたんだ。河原で君と会った時、僕、友達として大好きだって言っちゃった。…違うんだ。僕は君のこと、ずっと女の子として見てたんだよ。でも、君に嫌われたくなくて、自分の気持ちを誤魔化したんだ…」
「…十四松くん…」
愛しい。彼が、こんなにも。
「…お願いします。僕の、恋人になってください…!」
…体はまだ震えているし、顔も真っ赤で、緊張からか冷や汗までかいている彼。
でも、瞳はまっすぐ、私を見つめていた。
「…十四松くん」
そんな彼がどうしようもなく愛しく感じて、私は少しだけ身を乗り出し、彼の頬にキスをする。
「!絵菜…っ?」
「…はい。私も、あなたの恋人になりたいです」
「…!!ほ、ほんとに?ほんとにいいのっ?!」
「うん」
「〜〜〜〜っ!」
彼に笑顔が戻り、ゴンドラが揺れるほどの勢いで抱きつかれる。その拍子にバランスを崩し、私は彼に押し倒されるような形になってしまった。
「じゅ、じゅじゅ、十四松くん…っ!」
「やったーっ!めちゃめちゃ嬉しいっぺよーっ!わっははーいっ!!」
「きゃーっ!?」
彼は押し倒したことなど気にも留めず、思いっきり私に頬擦りしてくる。う、うーん、親愛の証なのだろうか?
「…ね、キスしてもいい?」
ぴたっと頬擦りを止めたかと思えば、急に真面目な表情になって私を見下ろしてくる。
「うん…いいよ」
優しく触れ合う唇。小鳥のように啄むその口付けは、とても甘い味がした。
元気いっぱいで、まるで太陽のように周りを明るく照らす彼と、
たまに見せる、大人っぽくて男らしい表情の彼。
このギャップに慣れないうちは、胸の高鳴りは当分収まりそうにないかも…―
《Happy End》