第23章 未来の選択【一松END】
日もすっかり落ちており、薄暗い路地裏はさらに真っ暗闇。
鳴き声だけを頼りに、奥へと進む。
きらっと光る、2つの眼。
「!いた…!」
まだルルだと断定はできない。もっと近付いて…
そこで私は、ようやく気付いた。猫の前にいる、黒い影。
…その猫と対峙するように、大きな野良犬が牙を剥いていることに。
「…!!」
「グルルルル…」
「シャーッ!」
よく見れば、猫はルルではなかった。
…けれど。
威嚇をしているようだけど、私には分かる。…あの子は、自分より遥かに大きい野良犬に、怯えてるんだ。
犬の方も血気盛んなようで、今にも猫に飛び掛からんとする勢いがある。
このままじゃ、あの猫が怪我をしてしまう…そんなのだめだ!
「ガウッ!」
「フギャッ!」
野良犬が動く。すかさず私は、猫の前に立ち塞がった。
「駄目ーッ!!」
恐怖心からぎゅっと目を瞑る。噛まれる…!
…しかしどれだけ待っても、痛みや衝撃は一向にやってこない。
うっすらと目を開ける。わずかに差し込む街の灯りに照らされて、私と犬の間に割り込んでいる人影らしきものが見えた。
「ッ……ああ、もう…ここまで予想通りとか、呆れ通り越して笑えるよ、ほんと…」
「い、一松くん…!?」
その声でようやく現状を理解する。…一松くんが、飛び掛かってきた野良犬から、私を庇ってくれていた。
「…いつまで噛んでんの。さっさと離せ…!」
「ギャンッ!」
一松くんが蹴りを入れると、野良犬は悲鳴を上げて走り去っていってしまった。
「…クソ、いってぇ…」
「だ、大丈夫一松くん!!」
右腕を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった一松くんに、慌てて駆け寄る。
スマホのライトで照らすと、彼の右腕からおびただしい量の血が流れていた。
「!!」
あまりの衝撃に、崩れ落ちそうになる。私を庇ったせいで、一松くんが大怪我を…!
「す、すぐ救急車…!救急車呼ぶから…!」
震える手でスマホをいじろうとする。でも一松くんは立ち上がってかぶりを振った。