第23章 未来の選択【一松END】
公園に到着すると、スマホをいじっている一松くんの姿があった。
「一松くん!」
彼は私に気付き、スマホをしまってこちらにやってくる。
「…ごめん。任せてって言ったのに、まだ見つけられてない」
「!そんな、一松くんが謝ることじゃないよ!探してくれてるだけでも十分助かってるもん!」
「…そう?けど痕跡すら見当たんないんだよね。昨夜からずっと近所の猫たちに協力してもらってるんだけど、有力な手がかりがなかなか見つからなくて…正直、だいぶ難航してる」
「私も、いろんな場所を探してみたけどどこにもいなくて…あの子まだ小さいから、車だって分からないだろうし…も、もし、敷かれたりでもしたら…!」
悪い予感ばかり頭に浮かぶ。そんな私の手を、一松くんがぎゅっと握りしめた。
「っえ…」
「…大丈夫だから。飼い主だろ?もっと自分のペットのこと、信じなよ。こういう時こそ、きっと無事だって前向きにならないと、助けられるものも助けられなくなる」
一松くん…こんなに、大人だったっけ…?
元々冷静ではあったけれど、こんなにも頼りがいのある、大人の男性だったなんて…私、今やっと、本当の彼を知れた気がする。
「ほら、続き。まだ全部探したわけじゃないだろ」
彼に手を引かれる。…この人と一緒なら、きっとまだ頑張れる。前向きになれる。
そうだ、信じなきゃ。飼い主の私がうじうじしてたら、それこそルルに申し訳が立たない。
…それから私たちは、時間の許す限り、街中を探して回った。
隅から隅まで見て回ったのに、結局ルルは見つからなかった。
今日はもう終わりにしよう、と一松くんが持ちかけたため、解散。また明日同じ時間に公園に集合することになった。
こんなに探しても見つからないなんて…
前向きになろうと決めたのに、一人になると一気に押し寄せてくる不安。
私が窓を閉めていたら、こんなことにはならなかったのに。
私の、せいで…
「…ゃー…にゃー…」
「!!」
今、猫の鳴き声がした。しかも、すぐ近くで。
「フーッ!」
警戒してる…?よく耳を澄ますと、向かいにある路地裏から聞こえてくるようだった。
…ルルかは分からない。でも、どんな小さな可能性にでも賭けなきゃ!