第23章 未来の選択【一松END】
約半月ぶりの再会。積もる話は山ほどあった。
私は、仕事のことや私生活の変化について、一松くんは兄弟のことや最近あった出来事について。
彼がこんなに喋ってくれるとは思わなかった。私の話にも、目こそ合わせてくれないけど、「へぇ」とか「ふーん」って相づちを打ってくれるし…相づちって言うのかな?
中でも驚いたのは、6つ子全員が就活をしているという話題だった。
万年ニートを貫くのだとばかり思っていた自分が恥ずかしくなるほど、みんな真面目に取り組んでいるらしい。今日もみんなでハローワークに出没したのだとか。
「一松くんは、何かやりたい仕事は見つかったの?」
「…まだ。とりあえず接客は絶対無理。営業も無理。やるなら製造かな、って漠然としたイメージがあるだけ」
「製造…」
頭の中でイメージしてみる。…作業服を着た一松くん…な、なんだかすごく作業に厳しそうだな…
それよりも他に、一松くんに似合う職業といったら…
あ!
「猫カフェの店員とかは?一松くん、私と一緒で猫好きだし!」
我ながらナイスアイデアだと思ったんだけど、一松くんは首を横に振る。
「それも接客。…猫の方ならいいけど。気に入らない客には近付かなければいいだけだし」
「あ、あはは、さすがに猫にはなれないよ」
確かに一松くん、猫っぽいけどね。
「…まぁ、今度はちゃんと見つけるよ。あんたが仕事頑張ってるってこと、みんなにも伝えとく」
「ふふ、よろしくお願いします。あ…着いちゃった」
話に夢中になっていて気付かなかったけど、もうアパートは目と鼻の先だった。
もう少し一緒にいたかったな…残念。
「一松くん、送ってくれてありがとう。それと、久々に話せて楽しかった!また連絡するね」
「…うん。じゃあね」
ちらっと私に視線を移したあと、すぐに踵を返して、彼は去っていく。
最後までぶっきらぼうだったけど…私のワガママに付き合ってくれた。やっぱり一松くんって優しいな…