第22章 恋い焦がれたその先に【チョロ松END】
「ごめんくださーい」
なんとか日が沈む前に松野家に辿り着いた私は、クッキーの入った紙袋を抱えて玄関の向こうに呼び掛ける。
急な訪問でびっくりされるだろうな…電気は点いてるし、誰かはいるはずだけど、なかなか出てこない。
も、もし留守だったら…
「はーい。どちら様ですか?」
!チョロ松くんの声だ!
「あ、え、あの、笹倉絵菜です!」
…なぜかフルネームで名乗ってしまった。
「絵菜ちゃん!?ま、待って、今開けるね!」
鍵を開ける音が聞こえ、戸が開かれる。チョロ松くんは驚いて私を見つめた。
「こ、こんばんは」
「こんばんは…というか絵菜ちゃん、なんでここに?会社、この辺りじゃないよね?」
「う、うん。一度家に帰ってから、ここに来たの。その…これを、チョロ松くんに渡したくて」
「え?」
私は持っていた紙袋を、チョロ松くんに差し出す。彼は戸惑いながらもそれを受け取ってくれた。
「ぼ、僕にくれるの?中、見てもいい?」
「うん」
紙袋を開き、中を確認すると、チョロ松くんの顔がみるみる笑顔に変わっていった。
「クッキーだ!これ、前にうちに来た時に作ってきてくれたクッキーだよね?また食べたいって思ってたんだ、ありがとう!」
「こ、こちらこそ、そんなに喜んでくれるなら、作ったかいがあったよ」
「でも、急にどうしたの?」
「…昨日の、お礼がしたくて。私にすぐできることっていったら、これしか思い浮かばなかったの。でも、喜んでくれたならよかった」
「!絵菜ちゃん…」
…どうしよう。私、チョロ松くんに告白したいな。
あなたが好きだって。お礼もしたかったけど、ただ、あなたに会いたかったんだって。
チョロ松くんは、どう思うかな…迷惑じゃ、ないかな…
「…ありがとう、絵菜ちゃん。クッキー、大事に食べるね」
「!う、うん…」
どうしよう…どうしよう。
会話が終わってしまう。
彼が家に戻ってしまう。
次に会う時までに、この気持ちを保っていられる自信がない。
…勇気を、出すんだ、私。