第21章 君の瞳に映るのは【カラ松END】
「!絵菜…?泣いているのか?」
「っえ…?」
頬を伝う何かを、手で拭う。
確かに私は、涙を流していた。
…なぜ?カラ松くんを哀れに思ったから?怒らない彼に感激したから?
違う。そうじゃない。
心が汚い自分が、情けないからだ…
「…ご、ごめんなさいっ!」
「!絵菜?!」
戸惑う彼をよそに、私は思い切り走り出す。
一切振り返らずに。街行く人々に泣き顔を見られても構わない。
ただ彼の傍にいたくなくて、逃げるようにひたすら走った。
「…はぁっ…はぁっ…」
かなりの距離を走り抜け、寂れた通りに出ると、私はようやく止まって息を整える。
彼は追ってきてはいないみたい。ちょっぴり寂しいと思うのはなぜだろう。自分から逃げ出したくせに。
…本当は、久しぶりに会えて、すごく嬉しかった。
もっと違う再会だったら、彼の隣に女性がいなかったら、私が勘違いをしなかったら…
きっと今頃、仲良く話せていただろうか。
「…ごめん…ごめんね、カラ松くん…っ」
涙が止まらない。
私…嫉妬してた。あの女性に。
あの人だから、ではなく、カラ松くんの隣にいる人なら、きっと誰にでも同じ感情を抱いてたと思う。
だから、彼女じゃないと知ってホッとした。…もし彼女だったら、きっと胸が押し潰されそうなくらいに苦しかっただろう。
辛くて、辛くて、それこそ生きていけないくらいに。
私は、それだけ…
カラ松くんのことが好きなんだ…。
力のない足取りで、自宅までの道を歩く。
…もう、会えない。会わす顔がない。
彼は優しいから、もし会えたとしても今日のことは何も言わないだろう。
それじゃだめだ。いつまでも彼の優しさに甘えていたら、私は今よりもっとクズになる。
…せめて、また会えて嬉しいって、素直に伝えられていたらよかったな…。