第21章 君の瞳に映るのは【カラ松END】
背中を向けて来た道を戻り出した途端、後ろから名前を呼ばれて体をびくつかせる。
この声は…と振り向くと、案の定カラ松くんが立っていた。
「ああ、やっぱり!久しぶりだな」
彼はそう言って笑顔を向けてくれる。隣に、さっきの女性はいなかった。
「…彼女…どうしたの?」
自分でも驚くほど低い声。せっかく彼が再会を喜んでくれているのに、素直に挨拶をする気になれなくて、つい彼女のことを聞いてしまった。
可愛くないな、私…
「彼女?…あ!い、いや、さっきの女性は、彼女ではないぞ?」
「…え?でも、レストランから出てくるの見たよ」
「あれは、その…」
口ごもってしまうカラ松くん。けれどそれは、嘘をつこうとしているのではなく、真実を言っていいものか躊躇っているように見えて…
私は彼から目を逸らさずに、じっと待っていた。
やがて、カラ松くんが口を開く。
「…実は、たまに、ごくたまにだが、ああいう美しい女性に声をかけられることがあってだな…」
「…うん」
逆ナンってことかな?
「それで、その女性の望むままに、プレゼントを贈ったり、レストランで食事を奢ったりするのだが…」
「…うん?」
何か雲行きが怪しくなってきた。
「金がなくなると、最後にはいつも手のひらを返すが如く冷たくあしらわれ、捨てられてしまうんだ…」
「それ完全に騙されてるよね?!貢がされてるだけだよね?!」
さすがにこれはツッコまざるを得ない。
「何!?…くっ、やはりそうだったのか…道理で俺の財布が常に空なわけだ…ホーリーシット!」
オーバーリアクションで悲しみを表現するカラ松くん。むしろ気付かなかったのがすごいよ…
……私、安心してる?彼女じゃなかったことに。
最低だ。いくらそうだとしても、カラ松くんは騙されてお金を貢がされる酷い目に遭ってたのに。それを安心するだなんて、私、最低だ…