第20章 繋がる想いは永遠に【おそ松END】
赤塚橋に着く頃には、もう約束の12時近くになっていた。
「…あ、榊さん!」
見慣れた背中を見つけ、声をかける。彼は振り向いて軽く手を挙げた。
「お待たせしてすみません」
「いや、まだ時間前だよ。俺が早く来すぎたんだ。…後ろの彼がそう?」
榊さんはおそ松くんにちらりと視線を向ける。
「あ、はい。えっと、彼が私の…きゃっ!」
「初めましてー!俺、絵菜の彼氏やってます、松野おそ松でっす!いつもこいつがお世話になってますー」
紹介しようとするのを遮られ、おそ松に強引に肩を抱かれる。ま、満面の笑みだ…そして意外と礼儀正しい…!
「ああ、こちらこそ初めまして。俺は彼女の先輩の榊です。…そうか、君が…」
まじまじと観察され、私は固まってしまう。え、もしかして疑われてる?どうしよう、証明しろとか言われちゃったりしたら…!
「あ、もしかして疑ってます?なんなら今こいつにキスしてもいいですけど?」
「んなっ!?」
衝撃のあまり変な声が出た。ななな、何を言ってるのおそ松!?
「や、やだ、冗談やめてよバカ!こ、こんな人目につく場所でキスなんてできるわけないでしょ!」
「昨日公園でしたじゃん?」
「あ、あの時は夜で暗かったし誰もいなかったから!」
「だってこの人絶対疑ってるよー?ここでキスでもすれば十分証明できるしさぁ。ってか俺がしたい」
「後半が本音でしょ!だめったらだめ!」
不毛な言い争いを続けていると、横で榊さんが吹き出した。
「ふっ…はははは!もういい、分かった分かった」
「…へ?あ、あの、榊さん?」
涙が出るほど大笑いして、彼は私たちを見つめる。
「いやー、これは間違いなく本物だな。疑うような素振りをして悪かったよ。残念なことに変わりはないけど、素直に諦めるとするか」
「え?え?」
「おそ松くん、だったか?俺が言う義理はないかもしれないけど、彼女のこと、どうか幸せにしてやってくれ。それじゃあ笹倉さん、また明日、会社でな」
ひらひらと手を振って人混みの中に消えていく榊さんの背中を眺めながら、私は呆然と立ち尽くす。
…よ、よく分からないけど、信じてもらえた…のかな?