第20章 繋がる想いは永遠に【おそ松END】
あの時の彼は、冷静でいつも通りで…嬉しそうになんて見えなかったのに。
心の中では、そんなに喜んでいてくれたの…?
胸が、締め付けられる。彼の言葉が本物なら、私だって負けないくらいに嬉しい。
おそ松くんは続ける。
「俺が最初断ったのは…¨偽者¨扱いされたくなかったからなんだよ」
「…¨偽者¨…?」
「そ。だって彼氏なんてその場しのぎの大嘘なわけだろ?そんなの俺は耐えられない。他の女の子にそう頼まれたら喜んで引き受けてただろうけど、君にだけは許せなかった」
「…どうして?」
彼が、私を見る。雲間から月明かりが照らし出され、暗がりでぼやけていた彼の顔が、はっきりと見えた。
「…絵菜のことが、好きだからだよ」
一瞬…時が止まったかと思った。
それくらい、彼の言葉は衝撃的で。
同時に、胸の奥から嬉しさや戸惑いや喜びが波のように押し寄せてきて、気付けば私は涙を流していた。
「…っ…ぅ…」
伝えなきゃ…私も伝えなきゃと思うのに、嗚咽が邪魔をして言葉が出ない。
それでもなんとかこの想いを表したくて、私は彼に抱きついた。
「わっ…と」
「…ぅ…っく…」
泣きじゃくる私を、おそ松くんは優しく抱き留めてくれる。
そして背中を撫でながら、耳元で囁いた。
「絵菜。…俺のこと、好き?」
トクン、と心臓が高鳴る。未だに声が出せない私は、彼の胸の中で無言のままこくこくと頷いた。
「…ん、そっか。あー、でも…」
不意に、おそ松くんは私から体を離す。
「ちゃんと絵菜の声で…好きって聞きたいな」
ほんの少しだけいたずらっぽく笑って、おそ松くんは私に顔を近付けてきた。
そして…
「…!」
―唇に、柔らかいものが当たる感触。
これまでも、彼には何度かドキドキさせられてきた。でも、
今度こそ、正真正銘のキス。
軽く触れるだけの口付けだったけど、その効果は絶大で、私の涙は完全に止まってしまった。
心臓が、早鐘を打つ。だんだんと思考が追い付いてきて、私は全身が熱を持っていくのを感じた。