第20章 繋がる想いは永遠に【おそ松END】
私は、ただ一つの可能性に賭けて、赤塚区内のパチンコ店にやってきた。
ここはおそ松くんがよく利用している店だと本人から聞いたことがある。6つ子みんなパチンコは好きだけど、夜にまでパチンコをしにくるのはおそ松くんぐらいらしい。
でもそれだって毎日ではない。それに今この時間にいるとは限らない。だから、可能性があるといってもかなりの低確率だ。
…けれど、不思議とここに来るまでに迷いはなかった。根拠はないけれど…会える気がするんだ。
意を決して、店内に入る。パチンコなんてやらない私にはほとんど未知の世界だ。ところ狭しと並ぶパチンコ台。爆音で鳴り響く音楽や効果音。とても長時間はいられないが、唯一の救いは客がまばらで見つけやすいことくらいだった。
なるべく店員さんに怪しまれないよう、台を選ぶフリをしながら店内を探して回る。見つからない。やっぱりそんなに都合よくは会えないか…と肩を落とし、最後の列に移動した、その時。
…彼が、いた。
「…あ…」
思わず声が漏れ出る。赤いパーカーを着たおそ松くんが、台に座っていた。
「うあーっ負けたーっ!ちくしょーやってらんねーっ!」
「きゃ!?」
いきなり大声を上げて頭を両手でガシガシと掻き回す彼。すると私の声が聞こえたのか、彼は「ん?」と顔をこちらに向ける。
視線が、カチリと合った。
「…絵菜?」
「お、おそ松くん…」
彼はしばらく呆然と私を見つめ、私も身動き一つできないまま。
やがて、おそ松くんはようやく現状を理解したのか、立ち上がりいつもの人懐っこい笑顔で私の目の前までやってきた。
「絵菜じゃん!うっわ、すげー久しぶり!ってか、え?なんでこんなとこにいんの?スーツ姿も可愛いねぇ、ひゅーひゅー」
テンションが完全に酔っぱらったおじさんのような気がするけど、なんだかいつも通りの彼に安心してしまう。
それに…久しぶりに会えて、すごく嬉しい。
「おそ松くん…!」
私は、込み上げてくる熱い感情に突き動かされるがまま、彼の両手を取ってぎゅっと握った。
「うお?!」
「また会えて嬉しい!久しぶりだね、おそ松くん!」