第18章 運命の人
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「チョロ松兄さん」
居間でくつろいでいたチョロ松は、トド松の声に振り向く。
「トド松?どうしたの」
トド松はちゃぶ台を挟んでチョロ松の向かいに座った。
「僕、チョロ松兄さんに話があるんだ。聞いてくれる?」
「いいけど…なんで僕なの?」
「んー、なんとなく?チョロ松兄さんが一番話しやすいかなって。他のみんなだと話すだけで疲れちゃうもん」
「ああ、それはまぁ…確かにね」
「それで話なんだけど。…僕ね、絵菜ちゃんのことが好きなんだ」
真剣な眼差しを向けてくるトド松。それまで笑顔だったチョロ松も、真面目な表情になる。
「…そっか」
「チョロ松兄さんもでしょ?」
「…僕は…」
チョロ松は言葉を詰まらせる。
その彼の様子を見て、トド松はわざとらしくため息をつき、かぶりを振ってみせた。
「はぁ、これだからライジング兄さんは。何を遠慮してるのか知らないけど、弟にすら自分の気持ちを正直に言えないんじゃ、一生最底辺から抜け出せないよ?」
「…っうるさいな、そんなこと分かってるよ。…弟だから、兄弟だから、言えないんだろ」
「じゃあチョロ松兄さんは、彼女のことを諦めるの?自分の気持ちを無理やり押し込めて、ずっと黙ってるつもり?」
「……」
「チョロ松兄さんや僕だけじゃない。他のみんなだって、彼女に好意を抱いてる。でもきっとみんな引いたりなんてしないよ。チョロ松兄さんだって本当は…
「俺は!…争いたくないだけだよ。6人で絵菜ちゃんを取り合うような真似はしたくない。それに、大事なのは彼女の気持ちなんだ。俺が素直になろうがならまいが、これだけは変わらない。…諦めるつもりはないよ。けど彼女が俺以外を選んだらちゃんと祝福する。それだけだ」
まっすぐ、強い決意の篭った瞳でトド松を見据える。…彼は、安心したように口元を綻ばせた。
「…うん、それならいいんだ。僕だって取り合いをしたいわけじゃない。兄さんたちとは対等でありたかっただけ。…誰が選ばれても、後悔はしないよ」
「ああ…そうだね」