第18章 運命の人
【6つ子side】
ベランダで外を眺めているおそ松の元に、カラ松がやってくる。彼は隣に並ぶと、少し間を置いてからおそ松に話しかけた。
「……なぁ、兄貴」
「んー?」
「兄貴は、絵菜のことをどう思っているんだ?」
唐突な質問。しかしおそ松は顔色一つ変えず、景色を眺めたままだ。
「あー…カラ松はどうなんだよ」
「お、俺は…いや、それよりも兄貴だ。兄貴がどう思っているのかを教えてほしい」
「……」
沈黙が流れる。しかしカラ松は引こうとはしない。やがておそ松は観念したかのようにため息をついた。
「どうって、そりゃ……好きだけども」
「…それは恋愛感情、か?」
「恋愛感情」
「そ、そうか…」
「で、カラ松は?」
「……俺も、その…好きだ。恋愛感情として」
「ふーん」
「………」
「………」
再びの沈黙。互いに目を合わせないまま、数分が経過した。
ふいに、おそ松がズボンのポケットからタバコを取り出す。そのうちの一本を、カラ松に差し出した。
「…お前も吸う?」
「あ、ああ」
ライターで火をつけ、煙を吐く。
「…なんかさ」
「?」
「こんなに本気で恋をしたのって、生まれて初めてな気がすんだよな」
「!……ああ、俺もそう思う」
「そりゃ、俺たち彼女いたことねぇけど、女の子との付き合いが全くなかったわけじゃないだろ?そもそも身近にトト子ちゃんもいたしな。…けど、恋したことって、思い返してみるとそんなにないんだよな」
「俺たちのトト子ちゃんに対する想いは、恋心というよりもどちらかといえば憧れだったからな」
「で、だ。…他の兄弟も恐らく、絵菜に惚れていると思うんだよ」
「…十中八九、そうだと見て間違いないだろうな。だが、最終的に決めるのは彼女だ。俺たちはそれを甘んじて受け入れるしかない。そうだろう?」
おそ松は景色に背を向けて、柵にもたれかかった。
「分かってるよ。…絵菜が好きになった奴が誰であろうと応援する。例え弟たちの中の誰かであってもな。…それがお兄ちゃんってもんだろ」
おそ松はニカッ、と笑う。それにつられて、カラ松も微笑んだ。
「ふっ…大変だな、長男は」
「…うるせー」