第17章 甘い時間と僕の願い【トド松】
「あのね、トド松くん…呆れないで聞いてね?」
「え?…うん」
「私…これまでみたいに、しょっちゅうみんなと会うことができなくなるのが…嫌、というか…た、耐えられないというか…みたいなの」
トド松くんのまんまるな瞳がさらにまんまるに見開かれる。
それもそうだ。私はとんでもない駄々をこねている。
会えなくなるのが嫌、遊べなくなるのが嫌、だから仕事に行くのはとても不安…だなんて、まるで子供の言い訳だ。私には私の生活があるように、彼らには彼らの生活がある。今までが特殊だっただけで、元からいつだって会えるとは限らなかったのに。
……私、いつからか、6つ子のみんなと一緒にいるのが当たり前になってた。
何よりも仕事優先。その思いで故郷を飛び出してきたというのに、みんなに出会って、時には助けられて、支えられて、笑い合って…そうしていつしか私の優先順位が、彼らと一緒に過ごす幸せに変わってしまっていたんだ…。
「……絵菜ちゃん、大丈夫だよ」
「トド松くん…?」
「僕らだって、君と会う時間がなかなか取れなくなるのは寂しい。でもね、その寂しさは、お互いに乗り越えなくちゃならないものだと思うんだ」
トド松くんは、一呼吸置いて、私を真っ直ぐ見据える。いつもの可愛らしい表情ではなく、意思のある力強い眼差しで。
「君がそこまで僕らを大切に思ってくれてるのは嬉しいことだし、感謝もしてる。僕らだって気持ちは同じだ。だからこそ、今のままじゃ…互いに依存し合ってちゃだめなんだよ。これが最後だと思って乗り越えないと、君の努力が無駄になる。そうじゃないかな?」
「!!」
……そうだ。
ここで後ろ向きになって立ち止まり悩むのは、私のために一丸となって様々な苦難を乗り越えてきてくれたみんなに対する裏切りでもあるんだ。
何より…私が私を許せない。
「…って、ニートの僕が言うのもどうかと思うけどね?ようするに、君には笑っていてほしいんだよ。笑って、前に進んでほしいんだ」
彼の一言一言が、心に深く浸透していく。
トド松くんが気付かせてくれた…ううん、思い出させてくれた大事なこと。
もう大丈夫。迷ったりしない。
「ありがとう、トド松くん。ピクニック、いつか絶対行こうね!」
「!…もちろん!」