第17章 甘い時間と僕の願い【トド松】
プシューッと音を立てて、体から蒸気が吹き出る。こ、こんな風に甘く囁かれたら、心臓が保たないよ…!
「……なーんてね。びっくりしちゃった?」
しかし次の瞬間には私から体を離し、トド松くんはてへっと笑ってウインクする。
く、悔しいけど可愛い…!
「も、もう、トド松くんのバカ!からかってる暇があったらお鍋あっためて!」
「あは、怒らせちゃった。はーい♪」
変なことはしないって約束してくれたのに…不意討ちなんて卑怯すぎる…!
とまぁそんな感じで時折トド松くんがちょっかいを出してくることもあったけれど、私たちは二人三脚でどうにかこうにかカレーを完成させた。
鍋にたっぷり入った出来立てのカレーを見下ろす。ふぅ…さすがに9人分ともなるといつもよりだいぶ時間がかかっちゃったな。
「味見する?トド松くん」
私は小皿に少しだけカレーをよそい、トド松くんに手渡す。
「え、いいの?ありがとう」
ど、どうかな…?
「…おいしい!すっごくおいしいよ絵菜ちゃん!今まで食べたカレーの中で一番かも!」
「そ、それは大げさだよ。でもありがとう。お世辞でも嬉しいな」
「お世辞なんかじゃないってば!ねね、早くよそって食べよう!もう僕我慢できないよ!」
「そうだね。私もお腹ぺこぺこ」
トド松くんの笑顔を見てると、こっちまで幸せな気持ちになれるな。屈託のない、純粋さがあるからかも。