第4章 松野くんと5人の松野くん
そういえば、松野くんといて気になっていたことがある。
「ねぇ、松野くんって六つ子なんだよね?」
せっかくのチャンスだ。雑談がてら、質問してみることにした。
「えっ、そうだけど何か?」
松野くんはきょとんとした目でこちらを見ている。
「いや……なんか凄いなって。しかも私たち同じ苗字じゃん。なんか親近感というかその……」
私は少し戸惑いつつ話した。松野くんは作業の手を止め、腕組みをしてから語るように話を始めた。
「いや凄いって……むしろ大変だからね。六つ子だけどみんなバラバラなこと言い出すし。物は取り合いになるわダースで服は買わされるわで……5人の仲間というより5人の敵かな。まっ、その中でも長男である俺様が一番えらいことに変わりはないんだけどな」
そう言いながら松野くんは鼻の下を右手の人差し指で擦るポーズを取っていた。私はその発言と行動に思わずクスッと笑ってしまった。おそ松くんは、
「おい! なんで笑うんだよ!」
と少し怒鳴り気味で話してきた。私は、
「だって俺様って……どんだけ自分大好きなの。大体、学級委員決める時だってそう。カリスマレジェンドって……一体なんなの? 初めて聞いたしほんと呆れるわー」
(あっ……思ってること全部言っちゃった……)
言い終わった後、私は我へと返り松野くんの方へと視線を向ける。松野くんの表情は真顔に近かった。
(やばい……空気悪くしたかも……)
私はまた一声かけようとしたのだが、
「そっかー……確かにカリスマレジェンドってよく分かんねーよな……けどかっこよくね? 俺気に入ってんだ! 後人間国宝とかも!」
(あれれ……そんなに傷ついてない……)
そう思うと私はまた笑ってしまった。