第4章 松野くんと5人の松野くん
クラスに着いてからは、席を向かい合わせにして早速作業を始めた。まずはお互い、部活動案内の用紙を折る作業。始めてから約5分後、松野くんが、
「あー、疲れたー! ねぇねぇ、これって効率悪くね?」
作業の手を止め、私に話しかけてきた。私はすかさず、
「でもこれ以上効率のいいものなんてないよ。ほら、休んでないで作業進めて。私だって早く帰りたいんだから」
そう言い返すと松野くんはまた作業を始めた。それでもまたすぐに飽きて、折っていた部活動案内の用紙を見ながら、
「あーあ。今頃あいつらは家に帰ってんだろうな……部活とかもまだ入ってねーだろうし。しかしなんで俺がこんなことを……」
(なんでって……自分から立候補したからに決まってるでしょーがっ!)
と言いたいが言えない。もし仮に言えたとしても不審に思われる。数日しか会ったことない人にそう思われるのは避けたかった。