第13章 松野アクシデント
私とおそ松くんはペンギンショーが行われる水槽まで全速力で走り、なんとか開演までに会場へ着くことができた。私は少し呼吸を整えたところでスマホを開く。時刻は12時55分。ギリギリであった。そして1つの通知が届いていた。宛名は女の子さんからであった。先ほどの顔を見て、なんとなくだが予想はついていたのだが、今来たメッセージを見てそれが確信へと変わった。その内容は、
『おそ松くんと2人きり、頑張れ!』
たった1行の文だが、私はめっちゃ照れた。
「なんとか間に合ったな……それにしてもすげぇ人だな……」
おそ松くんは私にそう言う。言われてみれば周りには人が溢れており、私は今の場所からペンギンのいる水槽が見えるか見えないか微妙なところにいた。私が背伸びをしてみていると、
「ほら、ここなら少し隙間あるから入れるんじゃねーか?」
とおそ松くんは言い、急に私の肩へ腕を回してその隙間がある場所まで体を持っていってくれた。すると私たちの距離は人一人入れないくらい近くなった。私は驚いて、その場ですぐには声が出せなかったので間が空いた。少し経ったところで、
「あっ、ありがとぅ……」
と一言。それもそのはず、まさかおそ松くんはいきなりカップルみたいなことをしてきたのだから。普通なら『ここ空いてるよ』と言えばいいことを……もちろんおそ松くんには自覚がないと思っている。しかし今更、この状況を把握したおそ松くんは、
「あっ、ごっごめん……」
と言いすぐに肩から手を離した。そしてペンギンショーは始まったが、私たちは何も話さず、ただショーを鑑賞する形となっていた。