第32章 チョロ松くんとの花火大会
「大丈夫って大丈夫じゃないよね。ちょっとひと気のないところまで道なりで歩こうか」
私はチョロ松くんにそのまま手首を掴まれ歩いた。ひと気のないところで落ち着くと、
「改めてだけど松野さん、大丈夫だった? まさかこんなところで会えるなんて思ってもなかったから」
と私を気にかけてくれるチョロ松くん。
「うん……大丈夫。本当にありがとう」
私はお礼をするとチョロ松くんは、
「ならよかった……でもどうして逆走なんかしてたの? このままじゃ危ないところだったんだから。それとさ、足の方は平気?」
と私の足を見て言う。実は言うと痛さがじわじわときていた。いわゆる靴ずれをしていた。
「見た限りだと平気じゃないよね。ちょっと下駄脱いでそのままにしてて」
とチョロ松くんは言うと私の前にしゃがみこみ信玄袋(※1)から絆創膏を取り出した。そして私の足に綺麗に貼ってくれた。
「よし、これでいいかな」
と言いながら立ち上がった。
「あっ、ありがとう」
私はまたお礼をするとチョロ松くんは、
「いやいや、大したことじゃないから。でも何かあったとき用にってね」
と微笑みながらで応えてくれた。
※1,信玄袋(しんげんぶくろ)︰主に男性が浴衣や甚平を着た際に持ち物を入れておく袋