第1章 勧誘
私が体育館に入った瞬間に走る沈黙。
それに私は何だか気まずくなって下を向いてしまった。
しかし、そんな沈黙をすぐに破った人物がいたのだ。
「う、うおおおおおおおお!スガさんなんすかその可愛い子は!!も、もしやスガさんの彼女とかじゃねぇっすよね!?ねぇっすよね!?!?ぐおぉぉお!!!」
「田中うざい」
『。』
体育館の沈黙を破ったのは、田中さん…という人だった。
翔陽から話しは聞いていたから分かる。
何だか、面白そうな人だった。
そしてその後、他の人達は練習を止めて何故か私をひたすら見てきたのだ。
「おっ!来たなぁ!」
皆から注目されて上手く顔をあげられない中、そんな雰囲気を壊す安心できる声が体育館に響いた。
これは、間違いなく翔陽の声である。
彼は片手にバレーボールを抱えながら私の元へと走ってきた。
「な、何だ日向この女子生徒と知り合いだと!?」
すると、そんな翔陽にすかさず近くにいた田中さんがこう言った。
周りの人も興味津々で私のことを見てくる。
「あ、そうなんですよ!って言う奴で、いい奴なんです!」
『…翔陽が自己紹介してどうするのよ』
田中さんが目を輝かせて聞く中、翔陽はちゃっかり私の自己紹介もして笑った。
そして翔陽は目の前に来るとニッと笑い私の手をとった。
「これから宜しくな、!!」
『………は?』
手を握られ、何を言われるのかと思えば翔陽は元気にこう言って手をぶんぶんふってきたのだ。
いや、待って。今翔陽、"これから"とか言わなかった?
聞き間違い??
『あの翔陽…』
「ほら、この間皆が言ってたじゃないっすか、どこにも部活入ってない1年をマネージャーとして欲しいって!」
戸惑う中、翔陽はニコニコとしながらきょとんとする私の前で皆にこう言った。
すると次の瞬間何だか納得するバレー部の皆に、私は何だか嫌な予感しかしなかった。
「何だ、日向の応援だなんて言うから日向のこと好きな子かと思ったら、マネージャー志望だったんだな!」
と言う菅原さん。違います。