第1章 勧誘
『えっと「あの……」……』
。
お互いに目を見合う。
その時初めて、私は影山…翔陽が言うに鬼さんの顔を見たのだ。
声が被ってしまったことによってお互いに黙りこむ。
そして、少しの沈黙の後影山が私に頭を下げてきた。
えっ、鬼じゃないの……?
「…っと、日向がすいませんっした。じゃ、俺たちはこれで……」
『え、あぁ…はぁ……』
人と話すのが苦手なのか、彼は私のことをあまり見ずに謝るとすぐに向こうへと戻ってしまったのだ。
何だか、想像していたのと少し違った。
なんと言うか、翔陽と影山が兄弟のように見えたんだ。
「あ、おい影山!にもっとちゃんと謝れよなぁー!」
「あぁ???てめぇがボールとんのが下手なのがわりぃんだよ!」
「うわ……ほら聞いた?言った通りだろー……」
本当に、兄弟みたいだ。
何だか楽しそうだな、なんて。翔陽にとっては嫌なことなのかもしれないけど、私は2人を見てそう心から思った。
面白い2人だ。
「っておい!何ニヤニヤしてんだよ!!」
『ニヤニヤなんてしてないって』
「してたー!」
『してない』
「してたー!!!」
『してない』
「して」
「日向ボケーーーーーーーー!!!!」
「ひっ!じ、じゃあまたな!」
私も人に言えないような兄弟喧嘩みたいなのを始めたら、影山に怒鳴られてしまった。
それに翔陽は肩をビクッとさせて足早に手を振りながら去っていった。
『なんか、いいなぁ…』
青春って感じで。
そう心の中だけで呟いて私は彼らに背を向けた。
それでも私は、羨ましいとは思うけど、深く関わりはしないと思っていたんだ。
そう、この時までは。
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そして、少ししたある日。
翔陽が凄い勢いで教室へと入ってきて私の前へやって来たのだ。
いつも元気だけど、今日はなんかいつにも増して元気な気がする。
『どうしたの?』
「ききききき、今日が3対3の試合なんだ!」
『?今日なんだ、頑張ってね』
「お、おう!なんか緊張すんだよなぁ!」
珍しいくらいに楽しそうな翔陽の笑顔を見て私は微笑んだ。
そうか、今日があの試合の日なんだ。