第1章 勧誘
そして、その後は主将の澤村さんに自己紹介をと言われ、烏野高校バレー部の皆の前で軽く挨拶をした。
その他にも、1人1人自己紹介もしてもらって、本格的に活動がこの日から始まったのだった。
でもその前に、マネージャーになったからには、皆と信頼を築いていかなきゃいけない。
皆がまだ練習をする中、深く考え込む私。
翔陽は、一番問題ないと思う。あれだけ一緒に話したりしてる訳だし、何より同じクラスだ。
それに、菅原さんもさっきの試合の見学のときよくどんな人なのか分かった。
きっと菅原さんも大丈夫だ。
だけど、私の中で一番問題なのは……
あの、月島蛍という彼。
どうやら同じ1年らしいんだけど、何だか無愛想だし近寄りがたい。
まぁ、それを言ってしまえば影山も信頼を築くのに時間がかかりそうなんだけども。
そう思いながら唸っていると誰かに肩を叩かれた。
『??』
「あ、悪い。なんか難しい顔してるから悩みごとかなぁって思ってさ」
肩を叩かれ後ろを振り向くと、そこには菅原さんが立っていた。
どうやら悩んでいたことが予想以上に顔に出ていたらしい。
それに気づいてくれるなんて、凄い人だと思った。
『あ、はい。その、皆どんな人なのかなぁって思ってたんです』
「どんな人?」
『んー…なんか、菅原さんや翔陽みたいに話しやすい人なら特に問題はないんですが、月島や影山とかと上手く接することできるかなぁって……』
悩んでいる中心配してくれた菅原さんに、思っていたことを話してみる。
そして、こう言ってコートを見てみた。
こうして練習を見ているだけでも何となく分かる、皆がどんな人なのか。
そう思って私は目を伏せた。
すると、菅原さんが少しだけ驚いた顔をして私のことを見ているのが分かった。
「は凄いな…ちゃんとそうやって皆のこと考えてくれてるんだな」
『えっ、あぁいや…マネージャーになるからには皆と折角だし仲良くできたらなぁって思っただけで……』
「ははっ、それが凄いことなんだって。…大丈夫、ならすぐに皆と仲良くなれるべ!」
不安をかきけすような明るい笑顔。
私はその笑顔に何だか少しだけ不安がとれた。
人に、こう言われると不思議と安心できるのだ。