第1章 勧誘
「俺、少しの間しかまだ一緒にいねぇけど、ならマネージャーにすっげぇ向いてるって思ったから!だからお願い!」
頭を下げられては、もう頷くしかない気がしてきた。
周りも何事かときょとんとしながらこっち見てるし、翔陽がきっとこのことバレたら何かと彼の命が危ない気がした。
だから…
『…少しの間だけでいいなら……』
私はこう呟いて、翔陽を見た。
すると次の瞬間、今までにないくらい笑顔になった翔陽は私の手をバッと掴んでぶんぶん手を振ってきたのだ。
まだ体温の高い手と、私の冷えた手が重なる。
そして私は、そんな翔陽を少し驚きながら見ていた。
「サンキュー!!!俺すっげぇ嬉しい!!」
『……喜んでもらえて良かったです』
未だに何だかマネージャーを引き受けてしまったことに実感がわかないまま、私は喜ぶ翔陽のことを見ながらそう呟いた。
でも、どうして私がマネージャーになったくらいでこんなに喜んでくれるのだろうか。
それはちょっとだけ、嬉しい気がした。
そして、その時──
「ん?あなたは?」
私の目の前に、美女が現れた。
多分、誰が見ても2度見してしまうくらいの人だ。
黒髪のセミロングに眼鏡をかけた優しそうな人、先輩だろう。
その人は、私を見て首を傾げた。
突然のことに何も言えなくなる私。
すると、すかさず近くに菅原さんがやって来て私をフォローしてくれた。
「こいつ、今日から新しくマネージャーやってくれる子なんだよ」
「新しく、来てくれた子…?」
『あ、はい……えっと、って言います』
菅原さんのフォローに感謝しながら、その女の先輩に挨拶をして私は深々と頭を下げた。
体育館は、ボールの音がしないためかなり静かである。
そして、少しの間の後、その先輩は小さく微笑んでくれた。
「嬉しい、宜しくね、。私は清水潔子」
『はい!清水先輩……』
少し照れ臭くなって私は下を向いた。
でも何だか、他にも女性がいて凄く安心できた。
私1人だと、絶対何かやらかしそうだし。
それに、なんか清水先輩少し嬉しそうにしてくれてて、こっちまで嬉しくなった。