第1章 勧誘
あの高身長の彼、月島は特にその背の高さを生かして翔陽達のボールを跳ね返していた。
また、澤村さんの完璧すぎる安定したレシーブもこちらがわのチームを大きく支えている。
山口もしっかりとボールを繋いでいて、本当に見入ってしまった。
『何だか、凄いチームになりそうですね』
あまりの迫力に私はボソッと呟く。
すると、隣にいた菅原さんがそんな私の言葉に笑いながら頷いてくれた。
「そうだな、もっと強くなっていくだろうな烏野は」
『……はい』
ジッとコートを見つめながら優しく微笑む菅原さんに、私も頷いてみせた。
汗をかきながら影山のトスを呼ぶ翔陽や田中さん、協力し合って守備を固める月島や山口や澤村さん。
見ていれば見ている程、どんどんバレーの世界へと吸い込まれていくようだった。
1つのボールでこんなに笑顔になれる、1つのボールでこんなに協力できる。
そんなスポーツが、この時の私には未知の世界だけど何だかとてつもなく素晴らしいものだと思った。
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やがて、時間は早いもので、結果は翔陽チームの勝ちとして試合は終わった。
取り合えず当初の目的であるものはクリアしたらしく、影山がどことなく喜んでいるように見えた。
熱気がまだ残る体育館に涼しい風が入り込む。
それと同時にこちらに駆け寄ってきた翔陽の髪の毛がふわふわと揺れた。
「!!」
『………』
確かにバレーは凄かったけど、まだ翔陽のことを許した訳ではない私は駆け寄る翔陽のことをジッと見つめた。
すると、罰の悪そうな顔をしながら近づく彼。
汗を少しふいて、飲み物をがぶがぶ飲んでから翔陽は改めて真面目な顔つきになった。
そしてこっそり耳打ちしてくる彼。
「お願い!マネージャーやって!勝手なことは悪いと思ってるけどほんとお願い!」
なんて、手を合わせて頼み込んでくる彼に、私は眉間にシワを寄せた。
正直、やっぱりバレーなんて分からないし居ても邪魔なだけだと思う。
だけど、最初クラスに馴染むのまでに救ってもらったのは事実だったし、何だか引くに引けなくなってきたので、いいかな…なんて考えもあった。
…それに、少し楽しかった…
そう思って翔陽を見ると、今度はなんと頭を下げてきたのだ。