第2章 赤司征十郎の双子の話
「!!」
もう1人の赤髪の青年に抱きつかれるのはそこまで時間はかからなかった。
立海に到着した時にはすでに試合は始まっていた。
目の前のコートに立つ、もう1人の赤司はどうやら押されているらしい。
コートを囲む雰囲気もすでに相手方の方に向いていていた。
「あら、征ちゃんの弟。
負けてるわね…」
「赤司っちの弟、大丈夫ッスかねー?」
彼らしくないプレイに、はフェンスを掴んだ。
一緒に選んだラケットを振るその姿に、息を呑み、試合を眺めていた。
「」
赤司から声がかけられた。
何となくわかる。
ずっと見ていた2人なのだから、俯いていた顔が上がる。
視線はこちらに向くはずだ。
「しろちゃん!!!
がんばれ!!!!」
大きな声で、彼に叱咤するように、でも彼が好きだと言った笑顔が届くように、笑って見せた。
疲労で染まっていた表情は一変。
元気を取り戻していて、鮮やかなプレイが次々と決まっていく。
楽しい。
双子の兄、征十郎と違う、テニスを楽しみながらも勝利を収める統四郎には笑みを浮かべていた。
そして、統四郎はラケットを双子の兄に投げ渡し、に抱きついていた。