第2章 赤司征十郎の双子の話
「今日会いに行くンスか?」
「うん!!」
「じゃあ俺もお供したいんスけど…」
コソコソと広げられる会話に赤司は苦笑を浮かべた。
黄瀬のことだ。
これから行く場所について行きたいのだろう。
前までは断り続けていたのだが、今日は特別だ。
「うん、大丈夫だよ?
一緒に行く?」
「い、いいんすか!?」
黄瀬がと赤司を交互に視線を動かした。
赤司は首を縦に振り、はやく準備しないと置いていくとだけ残し、洛山ベンチへと帰って行った。
「校門で待ってるね」
「すぐに行くッス!!」
もすぐに赤司の隣に立つと、何事もなかったように手を繋ぎ歩き出したのを確認したところで、黄瀬は自分用のノートをバッグの中へ大事そうに直すと、もう一冊のノートを自分の主将である笠松のところへと持ってきた。
「これ!
っちからッス!」
「今さっきのノート…?」
「捨てたら許さないッス!!」
少しだけ声を低めに伝えると、彼は走りながらお疲れ様でーす!といつも通りの明るさで体育館から出て行った。
彼女たちの後を追いかけるのだろう。
残されたメンバーは、少しだけ動きを止めていたのだが笠松が動き出したことにより、他のメンバーたちも少しずつ動き出した。
「これは…」
今日の練習試合のノートだ。
事細かに書かれている内容は、復習としても、自分が気づいてない癖を教えてもらっているようで。
彼女がこの短時間でまとめた作業だとすると、かなり腕の良いマネージャーなのは間違いない。
「すげぇ…」
零れ落ちる言葉は一体誰のものか。
気にするものは誰もいなかった。