第8章 再びの月曜日
綾雁はキッと顔を上げて、忙しく縄目を解き続ける河合を眼光鋭く凝視した。
白くて滑らかな額に雄々しい青筋が走る。
「そんでテメエは何しに来てんだっつんだ、この四方八方美人がああァァァァ!!!!!」
ぐんと踏み切って飛び出た綾雁が、トマホークさながらの勢いで河合の方へ突っ込んで行った。
袖を潜って現れた手に細い銀色の縄の束が握られている。
「大体結び方教えたら解き方も教えるモンだ、ごらァ!!!こちとらお客様に苦情頂いて往生したわぁ!!!!!」
「あ、やっぱ苦情あったんだ?だよなあ。買って帰っても読めねえもんなあ」
全蔵が担いだ洞爺湖でトントンと肩を叩きながらアハハハハと笑った。
「いやいやいや、買った方にしてみりゃ笑いごっちゃねえよ。うっかり殺意すら抱いちゃうよ。リアルタイム派の漫画ファンなめんな?そんだけを楽しみに七人の敵と戦ってる立派な大人や我慢強い子供がどんだけいるか・・・・っつってもまだやっちゃうの?おいおいおいおい、おいこらヒゲ子!あー・・・スゲエなあ」
銀魂が綾雁の所業に呆れの声をあげる。
河合の傍らをすり抜けた綾雁の手から、師匠の解く手に負けない速さで結わえ直されたジャンプが放たれた。
ジャンプは平台に向かって飛び、見事にスタタタタ、タンッ、と、行儀よく積み上がり、周囲から思わずの「おお!」というどよめきと、ついついの拍手を巻き起こす。
背筋を伸ばした綾雁が、挑みかかる目で河合をまた睨み付けた。
「・・・・綾雁さん」
解く手を止めて、河合が向き直った。
「・・・・お見事!」
「ヴァカかッ、テメエはッ!!!!」
全蔵の投げた洞爺湖がスコーンと河合の額を直撃した。
「だは・・・・ッ」
のけ反って持ち直した河合を尻目に、洞爺湖を拾い上げた全蔵が綾雁をじっと見やる。
「いい加減にしろ。もういいだろうよ。アンタが結んでややこしくしちまったモンは河合が解いたんだ。また結び直してややこしくするこたねえじゃねえか」
「・・・・・・・」
無言のまま、綾雁が足を振り上げた。