第8章 再びの月曜日
額に手をかざして空を見上げ、目を細める。
「節度を守って立ち読みを楽しむには持ってこいの日だ」
「何ならオイラが立ち読みご自由にって書いてやりやすぜ?ご自由にお持ち帰り下さいでもいいや。持ってけドロボー、引っ括ってやらァ」
書店のエプロンをつけた沖田が河合にヒョイヒョイとスピリッツを放ってやる。
河合は慌ててジャンプを平台に置いて、飛んできたスピリッツの縄目をスッと解いた。縄の取れたスピリッツを近藤がパタパタパタッと受け止めて揃える。
「おーい、長谷川さん、レジ頼むぜ」
妙な顔をして騒ぎを眺めていた通行人が、近藤の手からスピリッツを取り上げて、これも書店のエプロンをつけた長谷川がスタンバイする表レジへ向かった。
「はいィ、ありがとうございまぁす・・・って、ちょっと、これちゃんとバイト代出るんだよね?俺入院費用稼がなきゃなんないんだからね?頼むよ、店長?」
河合が解いて桂や近藤らが並べる端から、買う客、頁を広げる客が集まる。
その賑わいに綾雁がポカンとした。
「・・・お客様が・・・」
全蔵が洞爺湖を肩に担いで肩をすくめる。
「これが普通なんだよ。こんだけ人通りの多いとこにある店だ。シンとしてる方がおかしいだろ」
「・・・私、本に纏わる事共はすべからく寂寞としたものと思っておりました」
「シンとした月曜日の本屋なんかあるか。ジャンプの発売日だぜ。週に一度の祭りなの、今日は」
早速ジャンプを立ち読みしていた銀時がニッと綾雁を見る。
「で?立ち読み解禁ですか?ヒゲ子さん?」
ハッと綾雁が我に返った。見る間に険しい顔になって足の重心を左にかける。
「立ぁち読みはぁ、お断りにございますうゥゥ!!!!」
ビュッと唸りを上げて繰り出た右を、銀時はジャンプ片手にヒョイと躱した。
「頑なだねえ。もういいだろ。お店が賑やかで店長も嬉しそうじゃねえか。適度な立ち読みは心のオヤツよ、ホント」
手慣れた様子でレジ作業をこなす長谷川をチラッと見て、補足する。
「まあたまに主食にしちゃってる可哀想なオジサンもいるけどな?ああなっちゃ駄目だよ、いや、ホンットに」
「河合様も店長も、立ち読み客のせいで無体な目にあわれました。河合様が職を解かれたせいで、私はあの方から更に遠ざけられ、挙げ句望みもしない見合いまでする事になって・・・」