第2章 火曜日
「お前らも綾雁さんの蹴りを食らったんならわかるだろうが、萬里小路は蹴鞠で名高い名門だ。歴史も長い」
「食らうこた食らったがそこまでは全ッ然わからなかったな・・・蹴りは蹴りだろ、何だ、ソレ。一般常識の範疇か?ズッパリはみ出た事聞いてきてねえか?」
「俺もわかんなかったなぁ・・・。もぉヒゲ子ちゃんの顔とトラックが鶏積んでたことしか覚えてねえや。ハハ。痛かったなあ。・・・蹴鞠?何ソレ」
首を傾げる全蔵と長谷川に、銀時が鹿爪らしい顔をした。
「蹴鞠ってなァ、ホラ、マロだかミロだか何やって食ってんだかわかんない人達がやってる、サッカーがおかんのカルピス並みにうすーくなっちゃったみたいなボヤーッとしたアレだろ?鞠か何かをポーンポーンポーンポーン永久運動的な感じでずううぅぅぅっと蹴り上げるヤツな?だまあぁって見てると、宇宙って何で息出来ねんだ?ケチくせぇなとか、神様って便所行くのか?その場合和式?洋式?どっちがお好み?とか、サンタってマジクリスマス以外の364日何やってんだ?路地裏で武蔵やってんじゃねえの?意外に綺麗な目してるよね、彼、とか、しょーもないのにふかーい事考えちゃって疲れんだよね、アレ」
「・・・どこが深ェんだよ。しょーもねえ一方じゃねえか。水溜まりでもオメエの発想よりゃ深いわ。ホンットくっだらねえ事ばっか考えてンだな。わかってんだかわかってねんだかハッキリしねえクチ挟むなよ。反って説明しづれェだろ?」
「ははは。まあまあトシ。確かに蹴鞠見てるとそんな感じになるよ。お妙さんは今何やってるんだろうとか、お妙さんはさっき何してたんだろうとか、お妙さんはこれから何をするつもりだろうとかな。柄にもなく哲学的になっちまう・・・」
「いや近藤さん。それ何も考えてねえから。いつものアンタそのもので蹴鞠も哲学も全ッ然関係ねえから」
「突っ込み役は難儀だな、フ」
忙しい土方をへらへら笑った全蔵に近藤が水を向けた。
「いやいや、しかしここでアンタに会えたのはついてた。アンタ河合宗良って知ってるか、元御庭番衆さんよ?」
「・・・・縄使いの河合か。伊賀者だな。何でここにヤツの名前が出てくる?蹴鞠ヒゲ子に何か関係あんのか?」
「蹴鞠ヒゲ子じゃないよ?萬里小路綾雁だよ?頼むから本人の前で間違えないでね?ヒゲでも足癖悪くてもお姫さんだからね、あのコ」