第2章 火曜日
「何?あの美人さん、ヒゲ子っての?綺麗なのに凄いよね~。立ち読みしてただけで人をトラックの前に蹴り出しちゃうんだもん。こちとらマンガ買う金なんかないから立ち読みしてんのにさ。ハハハ」
「何だ、グラさん、アンタもヒゲ子にやられたクチかよ」
「だから昨日挨拶したとき言ったじゃん!聞いてなかった!?ニンニン!」
「ニンニンじゃねえよ、何かムカつくなアンタ。聞いてない」
「言った!」
「や、マジ聞いてねぇし」
「よ、万事屋、お前まで何だよ!」
「ヒゲ子にやられたなんて初耳だよ?入院してたのも初耳だけどね?」
銀時が頭を掻きながら欠伸をするのを見て、土方は仏頂面をした。
「ヒゲ子じゃねえよ。テメエら気安くヒゲヒゲ言ってっけどな、ありゃ京のお公家さんとこのお姫さんだ。萬里小路綾雁。親許に帰してやんなきゃなんねえ事になってる」
「へえ。成る程な。だからアンタがたかだか事故の事情聴取に顔を出したのか。農閑期で一息ついてたんじゃなかったって訳だっはーッ!!!!いでづぃッ!!!テメエ今の俺に衝撃をあたえんなッ!触るな危険だッ!」
「ああ」
全蔵のベッドを蹴飛ばして足を組んだ土方がニヤリと笑った。
「わりィな。わざとだ」
「クソッタレ!どうなってんだ、このお巡りはよ!」
「落ち着けってハットリくん。今迂闊にクソなんか垂れたら命取りだよ、お前。プ。死因が痔なんて皆笑っちまって葬式もあげらんねぇじゃん。痔縛霊になっちゃうよ?」
「やかましい!ゲロモジャは黙ってろ!ぅうお、く・・・・チクショウ、テメエら覚えてろよ?退院したら全員千年殺しで痔・worldにウェルカムしてやるからな?あぁ?せいぜい夜道にゃ気を付けな」
「夜道で千年殺しってまんま痴漢じゃねえかよ。救いようがねえな。男相手に猥褻罪働く気か、この元御庭番衆は。ブタ箱ンブチ込むぞ」
「止めないか、トシ。人の趣味に口を出すモンじゃないぞ。誰にでも人に言えない秘密の一つや二つや三つ四つあるもんだ。わかるぜ、服部さんよ」
カーテンの隙間から顔を出した近藤に全蔵は真顔を向けた。
「・・・何かアンタには言われたくねえな。猛烈に。何でだ?」
「変態ストーカーだからな、このゴリラは」
銀時が薄笑いでベッドの背にもたれかかる。土方は渋い顔をしたが、当の近藤は何とも思わぬ様子で話を続けた。