第2章 火曜日
「人間死ぬ気になりゃあ何だって出来らぁ。でなきゃ死ね」
「そんなDEAD OR ALIVE実践しちゃってるバカはアンタらくらいのもんだっつの。大体死ぬ気で保険金詐欺なんかするくらいならアンタの言う通り死んじゃった方が早いからね?保険金てさあ、ちょっとそんな感じあるじゃん。あれ?俺ってば保険なんか一個も入ってねえってのに、鋭くない?いやいや、入れねんじゃねえよ。そういうポリシーなだけなんだけどね!保険なんか反って危ないし!いやぁ、銀さんてホント出来る男だよねえ!」
「オメエは出来る男じゃねえ。出任せの男だ、バカが」
「出鱈目の男でもいいんじゃねえか?アッハッハッ」
「保険に入ってねえんじゃ入院費もバカになんねえな。酒呑んでゲロ吐いてジャンプ買ってる場合じゃねえだろ、侍・・・・おい、グラさん。何でアンタまで頭抱えてンだ?駄目仲間か?駄目仲間なんだな、この二人」
「あぁ、こいつらァ駄目のツートップだからよ」
イチゴ牛乳で濡れたティッシュをビシッとゴミ箱に投げ捨てて、土方が全蔵に向き直った。
「で?髭の美人に蹴り飛ばされて事故ったってのはホントなのか?」
「痔を悪化させてまで嘘吐くと思うか?そこまで愉快な人間じゃねえよ、俺は」
「愉快かどうかは知らねえけどよ。参ったなこりゃ・・・」
新しく火を着けた煙草をくわえた土方がおもむろに立ち上がった。
全蔵の向かいの閉まっていたカーテンをシャッと開ける。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「おう」
ギブスのついた片足を吊った格好で血飛沫のとんだスピリッツを読んでいたゴリラが、手を上げて挨拶する。
土方は額に青筋を浮かべながら、シャッとカーテンを閉めた。
「・・・何アレ。何でこの病院ベッドにゴリラなんか寝かしちゃってンの?」
「近藤だよね?今のゴリラ近藤だったよね?何よ、アンタらの局長も入院してんじゃん。人に保険金詐欺なんて言っといて、そっちの大将も思いっきり入院してんじゃん。組織ぐるみで詐欺の疑いじゃん」
「やかましい」
口々に言う銀時と長谷川に掌を向けて黙らせ、土方は全蔵へ渋い顔を向けた。
「アンタらと同じとこで事故ったんだよ。立ち読みしてるとこ思いっきり車道に蹴り飛ばされてよ」
自分を特定して話し始めた土方に全蔵は薄ら笑いを見せる。
「ヒゲコか?」