第1章 目が覚めたら病院でした
神童が帰ったあと、病院の先生が来て、腹に張られたガーゼを取り替えたり傷の具合を診たりしてすぐに一人になった。
それからまた考える。
神童の答えに首を傾げる俺を見て彼は、まあ無事なら良かったと話題を戻したからそれ以上問いただす事ができなかった。
神童が嘘を言っている様には見えなかったし、言って彼に何か得があるとも思えない。となると、本当に稲妻町という町があると考えた方が良いのだろう。
しかし稲妻町…やはり聞いたことが無い名前だ。東京にそんな名前の駅があったろうか。
しかも俺が倒れていたのも同じ町の商店街だったという…。
何が何だか…。
先程も携帯で(本当は駄目だが)家族に連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。父・母・弟・祖母・祖父誰にも一切繋がらない。それどころか現在使われておりませんとまで言われる始末だ。
その他友人にかけても皆同じだった。
こんな事って…あるか…?
全く知らない地に一人。知り合いは皆音信不通。
これまでの記憶が無い俺。
急に天涯孤独になった気分だった。いやいっそはっきりそうであった方がまだマシの様にも思える。
しかし身動きが取れない以上、此処で怪我の回復を待つしか無い。
それが一番嫌になる。
これでは前にも後ろにも進めない。もどかしくてたまらなかった。
しかし単に此処が電波の悪い場所だという可能性も捨てきれない。まだまだ状況を読みきれてないだけだきっと。
今日はもう寝よう。
取りあえず、体も心も休めることにする。
布団を頭まで被って、目を閉じた。
まだ7時だがすぐに睡魔さんはやってきた。