• テキストサイズ

【イナゴ】目が覚めたら異世界でした。

第1章 目が覚めたら病院でした


すぐ横に、髪の毛が、あった。




いやいや普通に考えて髪の毛だけがそこに転がっているわけがない。きっとこれは…そうだかつらだ。

あれ、動いた…かつらじゃなくて人間の頭だ。そうだよ。
ほら顔もある。こっち向いた…うわイケメンだ…このやろう


…って誰!!?


「ああ、起きたのか」

今までベッドに寄りかかり寝ていたらしいイケメンくんは目を擦りながら笑顔を浮かべた。

しかし顔が近いような…。


「えっと…どちら様…?」


警戒して後退…出来なかった。自由が効かない体のせいで余計相手を警戒せざるを得ない。
優しそうな表情も今は何の根拠も無い奇妙な物でしかなかった。

「あ、すまない。俺は神童拓人。ここは稲妻総合病院だ。怪我は大丈夫か?」

俺の様子に気づいた神童は当たり障り無い簡単な自己紹介と、場所の説明をしてくれた。

怪我の事を知っているということは、彼が救急車を呼んでくれたんだろうか。



「なんか…いろいろありがとうな…良く分からないけど…」

「そっかあのとき意識が無かったようだし、分からないよな。」



そう言うと神童は今までの事を説明してくれた。

そしてその説明によるとこうだ。

部活の帰り、用があった神童は商店街を歩いていると、血だらけで倒れている俺を見つけた。意識も無く出血量も多かったから、危険な状態だったそうだ。直ぐに救急車を呼び、ここ、稲妻総合病院に搬送された。…らしい。


ここまで聞いても、当の俺には全く何が有ったのかが思い出せないのだが、神童が言うには記憶の混乱は良くあることなのだとか。





「あの…稲妻総合病院ってどこにあるんだ?」


そこで、さっきから考えていた質問を軽い気持ちで口にした。
俺の住んでいた街にはそのような名前の病院は無かったと思う。もしかしたら別の街に連れていかれたのかも知れなかった。

そうなるといろいろと面倒だ。知らない地からどうやって帰れば良いのか。

すると神童は首を傾げ、知らないのか?と逆に問い返した。

有名な病院ということか?それを知らないということは…相当遠い…?え…?


妙な不安感に苛まれていると神童はなんという事もなくこう口にした。

「引っ越してきたばかりとかか?…名前にもあるように、稲妻町だよ」


いなずまちょう…?


知らない名前だった。
/ 7ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp