第1章 目が覚めたら病院でした
俺が目を覚ましたのは真っ白な部屋だった。
と言っても俺が確認出来るのは天井のみ。
そこは柔らかなベッドの上だった。仰向けに寝ている。
薬の独特な匂いが鼻につく。病院の一室のようだ。
「いっ!!」
起き上がろうと体を動かそうとすると、腹に激痛が走った。病院のベッドに寝てるのはどうやらこれが原因のようだ。いつ負ったものか覚えが無いのだが…。
首を動かし(腹以外にも怪我があるようで動けない)窓の外をみる。時間は夕方頃だろうか。空が赤く染まり始めていてキレイなグラデーションが出来ていた。
鳥の群れの黒いシルエット。近づいては遠ざかって行く車のエンジン音。
どれもが1日の終わりを告げているようだ。
どれだけ寝ていたんだろう。
「おい君!大丈夫か!」
頭に響いた声が蘇る。
「ピーポーピーポー。」
同時にその後ろで鳴り響くサイレン。
あれは救急車のサイレンだったのか…。
となると、つまり俺は何かしらの理由で大怪我を負い、救急車でこの病院に運ばれた訳か…。
分からない事の方が多いが、状況が少し把握出来た。
また首を動かし反対側を見る。
「え?」
思わず声が出た。喉は無事なようだ。
しかし目の前の光景にそれ以上声が出なかった。