第6章 小学校中学年編
母さんの姿が見えなくなった頃を見計らって、拘束を解かれる。
開放された瞬間、私は十分な距離を取った。
「な、何するんだ! 私は遊ぶ気などなかったのに!」
激高する私など意に介さず、征十郎はゆったりと笑う。
「一言で言えば、興味がある。からだな」
私は、彼に興味を持たれるような事をした覚えはない。
唯一あるといえば……
「バスケか?」
「それもあるが、一番はその瞳だ。自分で言うのも何だが、俺は人より容姿は優れていると思っているし、丁寧な対応をこころがけている。なのに……」
嫌な予感がした。
彼は、見透かす目をしている。そう、全てを見通す、"天帝の眼"。
「どうして、怯えた目をする?」
耐え切れず、肩がはねた。
「ほら、今だって。どうしてそうも頑なに、距離を取るんだ。それが、気になった。理由にはならないか?」
観念するしか、ないようだ。
全てを話せるわけではないが。
「目が、怖かったんだ。全てを見透かしてしまうような目が。同年代とは思えない、落ち着いた雰囲気が」
私の言葉に目を見開いた後、彼はこちらへ距離を詰めてきた。
ゆったりと、まるで私を怯えさせないように。
「俺は特別な力が使えるわけではないから普通の物しか見ることができないし、落ち着いているのはきっと君と似たような理由だ。俺達の家は、一般ではないからな」
だから、怯えなくていい。
言葉の最後にそう続きそうだ。
だが、少し考えればわかることだろう。
私の記憶にある彼は、目の前にいる彼ほど幼くはない。目の前にいるのは、私と似たような家に生まれた、ただの子供だ。
遮るものがなくなってしまえば、きっと怖くはない。
いつの間にか近くに来ていた彼が、私の手をそっとつかむ。
そのまま上へと持ち上げて、自分の頬に触れさせた。
驚きはしたものの、手のひらに伝わる熱はとっても温かくて、祥吾や良と何ら変わりはない。
「ほら。怖くないだろう?」
「……ああ、そうだな。すまなかった」
ちょっぴり、フラグが建ってしまったんじゃ……と思ったのは、忘れてしまうことにした。これぐらいでフラグは建たないはず……!