第6章 小学校中学年編
「征十郎の周りには、いないのか? そんな人間が。子供らしい友達が」
私達くらいの子供であれば、損得など考えない普通の友達ができるはずなのだが。まるで、彼の言葉は。
「お前の周りに、子供が……対等な友達がいないと言っているように聞こえるのは、私だけか……?」
私の言葉に、彼は何てことないと言うように微笑みを深めた。私には、笑顔で感情を隠したようにしか感じなかったが。
「俺の周りは、仕事の話をする大人と、親に言われて赤司の息子という立場のおこぼれを狙う子供だけだ。あえて言うなら、母親は純粋な人だがな」
……お前は。全てを見透かすような瞳で、一体どんな世界を見てきたんだ。
私の世界は、両親や祖父母、いろんな人から沢山の愛情を注いでもらったおかげで、カラフルで光が満ち溢れている。
だが、征十郎の瞳は。私と同じ世界を見ているとは、思わない。
黙りこんでしまった私を見てどう思ったのか、征十郎は私の頭に手を置いた。
「こんな話をするつもりはなかったんだがな……乃亜は聞き上手なのか?」
茶化すように笑い声をこぼした征十郎を見ていて、私がこうして色々感じているのが彼にとって失礼にあたるのでは、と勝手に思ってしまった。
私には私の考えや世界があるし、他の誰かに悲しんでもらう必要はない。だから、私はもう何も言わない。征十郎が望んでいないのなら。
「聞き上手? お前が勝手に喋り出したんだろうが」
ふんっ、と鼻を鳴らすと、征十郎の肩から力が抜けていくのが見えた。
「ああ……そうだな」
きっと彼とは、長い付き合いになる。
赤司と、白藤。私達が、その苗字を持っている限り。