第6章 小学校中学年編
二人して公園につく頃には汗だくで。だが、とても楽しかった。
考えてみると、こうして母と遊んだりはしゃいだりするのは初めてかもしれない。
「お母さん、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわ……若い子と一緒にしないで欲しいわ……」
「若い子って、十分お母さんも若いだろう?」
「乃亜ちゃんに比べれば全然よ」
年齢を全く感じさせない母さんが、何を言う。まったく。羨ましい悩みだな!
大人に比べれば体力が有り余っているのはわかりきったこと。まだまだ体力に余裕がある私は母さんをその場に待たせてコートへ走る。
「母さん! 見ててくれ!」
スピードを落とさないままゴールへと突っ込み、ボールを空中へ投げる。
投げ出されたボールはリングに当たることなく、気持ちいいくらいすっきりとゴールへと入った。
「本当に……うまくなったのね……」
感極まったように言葉をこぼした母さん。
どうだ!と言わんばかりに胸を張ってみる。褒められるというのはくすぐったいが、同時にとても嬉しいのだ。
大人になるとなかなか褒められる機会はないからな。
母さんの側に行くと、よく出来ましたと頭をなでられる。
これで父さんがいたら髪の毛ぐちゃぐちゃにされるんだろうなぁ……。
「はっ……?」
されるがままになりながら遠い目をしていると、不意に手を叩く破裂音が響いた。破裂音っていうか、拍手?
驚いて音のした方へ視線を向けると、赤い髪の少年がニコニコと笑いながら手を叩いていた。
特徴的な真っ赤な髪と、幼い顔立ちに似合わぬ貫禄。
謎のエンカウント率をここまで恨んだ日はないかもしれない。
「あら……確か赤司さんところの……?」
母さんが、彼を見て何かに思い当たったように声を上げた。
うん、そうですよねー。わかっていたさ、もうこれは。
呟かれた言葉を拾った彼が、愛想よく笑いかけて来た。
「赤司征十郎です。白藤さん、ですよね」
疑問符ついてないじゃないか。わかってるよな?こいつ。
密かに冷や汗を垂らす子供がここにいるのに、母さんは一向に気づかない。
そうっと逃げようとした行動を先読みされて腕を掴まれたことから、気付こうとしない、気づかないふりをしている、が正しいのかもしれないな……。