第4章 小学校低学年編
夢中になってバスケした。
気がつけば、あたりは赤く染まっていた。
「そろそろ帰らないとまずいな」
「えーっ! 俺、まだ勝ってない!」
私と同じように汗を流しながら、それでも勝負を挑もうとする高尾をなだめるように笑う。
「また今度、だな。これ以上遅くなると怒られるのでな」
「う……俺も、そうだけど……」
それでも渋る渋る。
そんなに負け続けたのがショックだったのか。
「何時ならここにいる? 予定が合えばまた来るさ」
その時には祥吾や良を連れてこよう。
きっと、同じバスケが好きな者同士仲良くなれる。
「大体、毎日学校が終わればここにいる。 ほんとにまた来るか?」
負けっぱなしは嫌だとその鋭い目線が語る。
真正面から受け止めて、笑い飛ばしてやった。
「約束は守る。必ず、な」
「わかった! ……あ」
納得していたのに、ふと思いついたように声を上げる。
まだ、何かあるのか?と考えていたら、高尾が軽やかに笑った。
「そういえば名前、聞いてなかったわ」
「あー、そうだな」
こっちが一方的に知っていたから、思いつかなかったな。
笑いが収まらないらしい高尾に手を差し出す。
「わたしは乃亜、よろしく」
「俺は高尾和成。次は絶対に負けないからな!」
一日は、あっという間だな。