第4章 小学校低学年編
「それで……祥吾はどうしたんだ?」
こちらに来たものの、俯いたまま動かないし何も発しない祥吾を、軽く促す。
なるべく優しい声音で、刺激しないように。
「……お前はやさしいから、すぐに俺からはなれていくと思った。俺なんか捨てて……親父みたいに、いなくなるくらいなら、俺から捨ててやろうと思ったのに……」
耐えきれず漏れた嗚咽。
どんなに悪ガキに見えても、大人びて見えても、彼はまだあまりにも幼い。
なんともないと隠してきた心の傷は、確実に祥吾を蝕んでいる。
「祥吾は私に物ではないし、同時に私も祥吾の物じゃない。捨てるとか捨てないとかの問題以前に、私たちには確かな繋がりがあるだろう?」
言葉に出して確認したことはなかったけれども、確かに存在している心の繋がりには、祥吾もわかっているはずだ。
微かに震えている身体を包み込こむ。まだ私より小さいため、簡単に抱きしめることができる。
「祥吾が私を嫌っても、私が祥吾を嫌いになるなんてありえないからな!」
「……ばか…やろー……!」
私のシャツを握りしめるその様に、どうしようもなく愛おしい感情が溢れてくる。
まだ祥吾は大人の庇護下にあるべき年齢であり、私が守らなくてはいけない存在。
いつしか大人になって離れていってしまうまで、私は祥吾の側にいるからな……!
〜〜〜〜〜〜
「……二人とも、僕のことわすれてますよね……?」