第4章 小学校低学年編
呆然とこちらを眺めていた祥吾は、良の姿を見るなり目尻を吊り上げた。
「なんで……お前が乃亜といっしょにいるんだよ……!」
「どうしたんだ、祥吾。クラスの奴はどうした?」
周りに祥吾以外の人影はない。
いつもたくさんの男子に囲まれている祥吾にしては、珍しい。
「しらない人に、こいつよばわりされるおぼえはありません!」
おどおどしていて頭が低いのが通常の良がここまで喰いつくのも珍しい。
「名前なんか知んねーから。……なあ乃亜、どうしてだ」
「どうしてって、お前はクラスの奴といるだろう? だから良と遊んでただけなんだが……」
「今はぼくが乃亜さんにおしえてもらっっているんです。じゃましないでくださいっ」
良と、私の言葉を聞いた祥吾の顔が、悲しそうに歪んだ。
その表情があまりにも辛そうで、息を飲む。
「べつに……お前が言ってくれれば、あそんでやったのに……」
祥吾の一言に、ようやく話が繋がった気がした。
「祥吾、とりあえず入ってこい」
「乃亜さん!」
非難するような良の声。
悪いな。だけど、放っておくわけにはいかないんだ。
「埋め合わせはするから。許してくれ」
「…………」
沈黙を肯定と受け取って、祥吾に庭に入ってくように促す。
「……わかった」
納得いかない、といった雰囲気を出しているものの素直に従う祥吾。
多分、祥吾も心のどこかで気が付いているのだろう。
自分の持て余した感情に。
私が年上でよかったな……同い年だったら嫌われてるぞ……?