第4章 小学校低学年編
いつものように、学校が終われば良と一緒にバスケをする日々。
なかなか筋肉のつかなかった身体がだいぶしっかりしてきて。それでも考えている動きについてこれず固まることは多々あったが。
だんだん祥吾と話すことがなくなって、ここ最近は顔をあわせることもなくなった。
「良もかなりうまくなったな」
「ほんとですか!? 嬉しいです!」
子供だからなのか、それとも元々才能があったのか、良の飲み込みは早かった。
……ちょっとその才能に嫉妬したのは、心の中だけの話。
「でも、3Pが全く入らなくて……」
「ああ」
こればっかりは、練習でどうにかできる問題じゃない。
私も全く入らないからな。
「ある程度成長して力が付けば届くようになる」
「そう、なんですか?」
「良の飲み込みの早さが異常なんだ。やりすぎると大怪我するぞ」
初めの頃は忘れてしまいがちだったこと。
成長が追いつかない段階で、しかも過剰な運動をすれば肉離れやその他もろもろの怪我を起こしかねない。
しょぼん、とうなだれてしまった良の頭を撫でる。
私より低い位置にある頭は、実に撫でやすい高さなのだ。
「焦るな焦るな。焦ったって何もいいことはないんだからな」
焦って前に進めなくなるの、なんて経験をするにはまだ早すぎるんだからな。
「乃亜さんっ! 撫でないでくださいっ、恥ずかしいです!」
「いいじゃないか。私より小さいんだから」
撫でやすい場所にある頭が悪い!
むくれる良の顔を見ながら笑う。
くすくすと笑い声が響く中、それを邪魔するように良とは違う少年の声が耳に入った。
「乃亜……?」
呆然としたように、庭を覗く様子でこちらを見ていたのは、灰色の髪の少年。
少し高い位置にある庭のコートを見ていたのは、祥吾だった。