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恋風

第9章 帝国の刺客




「だったら……、せめて踏み台は私もやる!見てるだけなんて嫌、お願い手伝わせてほしい」

え、と3人は3人とも顔を見合わせた。その中でやはり風丸がいち早く花織の申し出に首を振る。

「ダメだ、お前にこんなことさせられない」
「どうして?私だってチームの役に立ちたい。それに……、2人の腕はもう限界だもの、これくらいなら私にもできる」

花織がジャージの袖口を捲り上げる。そして白い風丸よりも染岡よりも細い腕を差し出した。

「おい、風丸……」

困ったように染岡が風丸を見た。花織と風丸の関係は既に周知の事実である。花織のことはどうにか説得してくれと言わんばかりの視線を染岡は風丸に送っていた。風丸は微かに頷き、花織の腕に触れる。

「花織、頼む……。お前は女子なんだ、無茶なことはさせられない」

言葉の通り、風丸は花織に無茶な行動をさせたくなかった。彼女の腕がもし自分と同じように腫れあがる様な事態に陥ればきっと耐えられない。

「私はマネージャーとして、これ以上一郎太くんや染岡くんの腕を傷つけるようなことはさせられない」

だが、花織は決意を揺るがそうとはせず風丸の言葉を振り切ってずいと前へ進もうとした。

「風丸、きっと月島はそれじゃ引かないと思うぞ」

花織を説得する風丸にぼそりと豪炎寺が呟く。
確かに豪炎寺の言うとおり、元々陸上部所属であり、帝国学園の出身でもある花織にとって男子と同じ練習をこなすことは一般の女子と比べればそれほど難しいことではないのだ。方向が違うとはいえ、帝国学園所属時は自分で練習メニューを考え、多少無茶な練習もこなしていた彼女だ。この程度の説得で納得はしないだろう。

「月島」
「豪炎寺くん……?」

豪炎寺は風丸に腕を掴まれたままの花織の後ろに回り込み、そして彼女の耳元に顔を近づけた。風丸が思わず目を剥く。

豪炎寺はそっと花織へ何かと囁きかけるとすぐに花織の傍から離れた。残された花織は俯き、そしてほんのりと赤く頬が染まっている。どうやら、練習に加わることを諦めたように風丸には見えた。

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