第9章 帝国の刺客
「染岡、風丸……続けるぞ」
「あ、ああ……」
わけのわからないままに染岡は頷く、風丸は花織と豪炎寺を交互に見比べ少し眉を顰めると、ああと呟いて花織の腕から手を離した。
自分がどれほど説得しても聞かなかったというのに、どうして花織は豪炎寺のいう事ならそうすぐさま聞いたのか……考えれば考えるほど複雑でどこか不愉快な感覚を風丸は覚えた。
***
3人の練習は豪炎寺がようやく着地を決められるようになったところで終了した。その頃にはもう日が落ちる時間も遅くなってきているというのに辺りは真っ暗で、鉄塔広場の灯りが煌々と彼らを照らしていた。
「こんなに腫れちゃってる……、痛くない?」
「……このくらい、どうってことないさ」
ようやく花織は豪炎寺と染岡の怪我の処置を終え、ひとり離れたベンチに座っている風丸の隣に腰掛ける。そして彼の腕の怪我の手当てを始めた。さきほど氷だけは渡しておいたが、それでもやはり落ち着かない。彼の手から氷を受け取り、膝の上に置くと花織は風丸の腕をそっと撫でる。
「ちゃんと傷口は洗ってる?」
「……ああ」
どこか素っ気ない返事をした風丸にそっか、と花織は笑う。きっとこの程度なら厳重に包帯で覆ったり、消毒をしておく必要はないだろう。花織は再び風丸の腕に氷を押し当てる。とにかく、しばらくは冷やしておかなければならない。
「腫れが引くまではくれぐれも安静にね。……それじゃあ他のメンバーもちょっと」
「……花織」
風丸の傍から離れようとした花織の腕を風丸は掴んだ。その表情はどこか沈んでいるふうで花織は首を傾げる。
「どうしたの……?」
「いや、あのさ……」
どこか歯切れの悪い風丸の言葉で花織の表情は曇る。しかし彼が言葉を切り出すのをただ彼を見つめて花織は待った。数十秒の沈黙のあと、ようやく風丸は言葉を紡ぎだした。