第9章 帝国の刺客
「あれ?土門くん?」
そのとき不意に秋が花織の後ろを見て呟いた。花織が振り返ると土門がランニングをしながら校門を出て行くところだった。どうしたのだろうか、みんな理事長室にいたのでは?と花織は首を傾げる。なんにせよ、もうすぐ練習が始まるというのに。
***
土門飛鳥はチームの輪を抜け出して、ランニングをしていた。これも上から命ぜられていることだ。ランニングをしつつ辺りを見回しながら目的を探す。学校の塀周りを1週する頃、土門はやっとそれを見つけた。
「よーし、ちょっと休憩」
誰に言うでもなく彼は呟けば、傍にあった電柱に凭れかかる。そして頸に掛けたタオルで汗を拭いた。やはり夏日、少し走っただけでも汗が噴き出てくる。しかし、そのタオルは汗を拭くだけの物ではなかった。
「……円堂大介の秘伝書があります。しかし、円堂守以外の誰にも読めないので手に入れる価値はないでしょう」
タオルで口元を隠しながら土門がぼそぼそと低い声で呟いた。
「それと、月島花織のことですが……やはりDFの風丸一郎太と恋人同士のようです。詳しいことはまた」
そう言いつつ電柱近くの壁に1枚の紙切れを土門は置いた。そして再びわざとらしく休憩終わり、と呟くと再び彼は走り出した。そしてそれと同時に土門が今まで報告をしていた相手がにやりとした笑みを浮かべて電柱の影から顔をのぞかせる。
その人物は何を隠そう帝国学園の鬼道有人であった。キャプテンである彼が自らここに土門の調査報告を受けにくるよう総帥から命ぜられているのである。鬼道は土門の置いた紙を手に取る。
番号の羅列されたその紙を見つめて、鬼道はふっと口元に笑みを浮かべた。